白光舎製合図灯とその仲間        ページ内移動:マウスでスクロール,メニューへの戻り:バックボタン.

 白光舎(はっこうしゃ)は明治36年白光蝋油及び信号灯専業メーカーとして東京都大田区で創業し, 油灯および蓄電池式製品の生産を始め,平成20年頃まで充電式合図灯を供給してきました. 現在同社は自動車用のランプ・ドアミラーの大手メーカー市光工業鰍ニして発展し 神奈川県伊勢原市に健在ですが,合図灯事業からは撤退しています.銘板には社名変遷の様子が見られます.


合図灯
白光式合圖燈(廻型)
 廻型(まわしがた)合図灯は主に西日本で用いられたもので,色フィルタ付の内筒を外筒に対して 廻すことにより表示色を変える仕組みです.内筒上部に凹レールが廻らされ,外筒前部のローラーと後ろのピンが 溝にはまって内筒が抜けないようになっています. レールには穴が開いており,ピンを刺すと色フィルタが正しい位置に固定されます. 押型と異なり上蓋部にレバーのスリットが無いので雨水に強い特長がありますが, 白色(素通し)以外を表示したとき取手がレンズの向きに対して斜めになってしまいます. また廻型の変形として,上蓋部に水道の蛇口様の転換ハンドルがついた「札鉄型」があり, 内外筒が凍結固着しないという特長がありました.

昭和30年1月製.島原鉄道・多比良駅で使用.
 
白光式合圖燈(押型)
 昭和20〜30年代の押型(おしがた)の合図灯です.円筒形合図灯としては磯村製E-2型とともにポピュラーなもので, 角形合図灯に交代する昭和40年代まで長く使用されました. 押型は上部のレバーを左右に押すことにより表示色を切り替えるもので, 色フィルタは円筒状の部材として上蓋部に設けられています. 電池には2Vの充電式蓄電池(TA2-2)を使用します.

昭和39年3月製.網走駅で使用.
 
小型合図燈(取手固定)
 円筒型合図灯に代わり昭和39年頃から46年頃まで造られたもので, 角形の筐体に取手がついたおなじみのスタイルです. 中心の主灯に加えて右上に赤灯があり,万一の球切れに備えていました. 単一型の充電池または乾電池を両側の蓋を開けて1本ずつ入れますが, 充電池の場合は合図灯ごと充電台に載せて充電できるよう底部に端子が付きました. これにより電池を取り出して充電する手間がなくなったため,利便性が向上しました.

昭和44年8月製.
 
小型合図燈(取手可倒機構付)
 取手が可倒式になっているほかは,前のものと同じです. 折りたたむと小型になるため,乗務員のカバンに入れやすくよう配慮したものと思われます.

昭和42年7月製.
 
小型合図燈(作業燈兼用)
 国鉄指定品だったこともあり昭和46年から平成19年頃までのロングセラーで,これぞ合図灯の定番ともいうべきものです. 旧型に比べて全面プラの露出部が小さくなり金属枠で覆われため,破損が少なくなりました. 取手はプラになりましたが,可倒式機構は健在です.

昭和59年7月製.
 

合図灯の派生品
ベビーランプ
 単一型電池2本で使用するもので,昭和20年代中ごろから登場しました. 電池固定用の板ばね機構やレバーによるフィルタの転換機構など,上記の角形合図灯の原型となるメカが用いられています. 赤のみのものと赤青切替ができるものがあります.銘板はPAT.HAKKOSHAとのみ記載されています. レンズにはKK HAKKOSYAの浮き彫りがありますが,どういうわけかSが鏡文字になっているのと,SYA(レンズ)/SHA(銘板)の違いがあります.

昭和30年頃の製品?
 
携帯電燈
 赤い筐体が特徴の電灯で,昭和30〜40年代に製作されました. 国鉄の「工」マークが裏蓋にプレス加工され,銘板には「日本國有鉄道」と刻印された立派な造りです. 円筒合図灯よりも小型の充電池を使用しており,市販の懐中電灯の性能が十分でなかった時代, 一般の夜間照明に用いられました.レバースライド機構により,赤灯も提示できるようになっています. レンズ部がプラ製のA型と金属製のB型があり,A型は熱に弱いため蒸気機関車周辺では使用不可でした.

昭和38年4月製.
 
白光式検車灯
 合図灯の派生品として検車灯,荷扱灯と呼ばれるものが円筒筐体時代から存在しました. これは角形の検車灯で,合図灯の2倍の大きさの4Vのバッテリ(TA2-4)を用います. 後部にはフィルタを入れる薄いケースが設けられており,レンズ部を開けてフィルタを装着すると赤灯としても使用可能です. 検車灯,荷扱灯は2V,4Vの仕様があり,4Vのものはバッテリが大きいので2V製品に比べて若干太い形状をしています.

昭和36年3月製
 
小型検車灯
 検車灯の最終製品で角形合図灯の筐体と取手を流用し,レンズのみ新設計です. 充電端子も健在です.

昭和51年3月製.
 
配車灯
 古くは「車号灯」と呼ばれており,客車・貨車などの配車担当者が夜間現場で使用するものです. 両手を空けても使用できるよう肩掛けの金属ストラップが付属し, 胸部へのあたりをソフトにするため裏蓋には黒いスポンジパッドが付きます. ライト部は向きが変えられるよう,首振り機構付きとなっています.

1992年12月製.
 
 上のものよりも10年程度前の製品で,ライト部が円筒形で小さめです.
銘板が剥落してますが,昭和57年頃の製品と思われます.
 
列車停止燈
 夜間に整備停車中の編成側面に掲げるもので,両側に赤いレンズがあり, 雨樋やサボ受けに掛けられるようなフック状の金具がついています. 上蓋中央のねじキャップは予備電球の収納部で,白光舎の円筒型シリーズに見られる共通の特徴です.

昭和7〜22年頃の製品.
検査作業灯(車両用赤色灯)
 上記製品の後継品で,角形合図灯の筐体を応用しています. 製作年代によりレンズ色と電球が異なり[赤プラレンズ+白熱電球]→[白プラレンズ+赤LED]→[赤プラレンズ+赤LED] のようにマイナーチェンジされています.白光舎が最後まで供給し続けた製品の一つです.

2002年11月製.奈良電車区で使用.
 

充電器とバッテリー
充電器
 白光舎の角形筐体シリーズは充電端子が共通化されており, 台上に置くことにより充電される専用充電器がありました. 下は湯浅蓄電池製造製の5連充電器「AAS-3B型」で,様々の灯具類を置いて充電することが出来ました. 回路は充電台ごとにトランスと半波整流回路を設けた単純なものですが,トランスの巻線に工夫がしてあり, 充電中にオレンジのパイロットランプが点灯する配線となっています. 充電時間は4時間使用時,6時間以上,それ以上使用時は12時間以上と記載されています. 小規模事業場向きに2連の充電器も存在し,型番が「AAS-3C型」となっています. メーカーとしては湯浅のほかに,古河電池/新神戸電機があります.白光舎製もあるようですが,どうもOEMのようです.

昭和48年1月製.
 
旧型合図灯用バッテリー
 旧型合図灯用のバッテリーは4Vのもの(TA2-4)と2Vのもの(TA2-2)があります. 下は昭和40年12月製の新神戸電機製TA2-4鉛バッテリーと,Novel製TA2-2サイズの箱型乾電池の外観です. 乾電池を分解すると単2電池が2直2並に半田付けされ,厚紙スペーサーでサイズ合わせをしてありました(乾電池は1989年12月製). そこで似たような大きさのプラケース(RSコンポ,493-6133)の中に電池ケースを収納し,ケース前後に金属箔テープで電極を貼りつけて, 合図灯にうまく収まるものを作ることが出来ました.TA2-4用はTA2-2用のケースを2個背中合わせで使用します.

どちらも電池2本収納で3V仕様に統一.
※ヤフオク等に出品の類似製品と,当サイトは全く関係ありません.